私を選んでくれたのですか。あなたのような素敵な方に選んでもらえて光栄です。
改めまして、探偵のテス・プレーと申します。よろしくお願いいたします。
このゲームでは、あなたが私になっていただきます。これから私の過去と昨日の行動をお伝えします。あなたの力を信じています。どうかこの事件を解決してください。
まずは2年前の事件からお話ししましょう。2年前も私は探偵をやっていました。事務所をやっと開いたばかりの売れない探偵でしたけどね。私はある男性から依頼を受けました。依頼人は個人で起業している税理士でアーラン財団の経理を担当していました。お嬢さんが二人いて、一人はベア学園の生徒、もう一人は社会人で離れて暮らしていると聞いていました。依頼人はベア・アーランの帳簿が合わないことに気付き、それを指摘したそうですが、ベア・アーランはそれを黙認しなければ会社を潰すと脅してきたそうです。依頼人は脅されたとしても税理士として帳簿のごまかしを見過ごすわけにはいかないと考え、私にこんな依頼をもってきました。ベア・アーランの行動を監視し、金銭のやり取りが行われそうな機会があれば教えてほしい、と。非常に探偵らしい仕事です。私は張り切って調査を始めましたが、ベア・アーランの護衛に私の探偵行為がバレてしまいました。探偵失格です。ベア・アーランは私に「今の依頼料の倍を出すから私の側につきなさい」と言ってきました。事務所を開いたばかりでお金に困っていた私はあろうことかその誘いに揺らいでしまいました。判断を迷っている間に日が経ち、依頼人の男性の会社はベア・アーランに潰されてしまいました。そしてそのまま男性は一家心中を図ってしまったのです。依頼人の男性とお嬢さんが亡くなりました。離れて暮らしていたもう一人のお嬢さんは無事ですが、コンタクトは取れませんでした。ベア・アーランは、依頼人を守らず心中に追い込んだ探偵として私の悪評を流しました。男性の会社を潰したのはベア・アーランだと反論をすればよかったのですが、私も当時は心を病んでしまい、噂を流されるがままとなってしまいました。私は探偵事務所をたたむことになり、事務所名を変えて移転する羽目になってしまいました。
確かにベア・アーランのことは今も良く思っていませんが、当時は私も未熟だったのです。殺してやろう、などということは、私も探偵の端くれですから思いません。こうして同じホテルに宿泊していたタイミングで亡くなってしまうとは……。
マップ
1階
2階
所持品
万年筆
ネクタイピン
懐中時計
手帳
ハサミ
タイムテーブル
16:30
ホテルに到着。ここEnigburgh郊外での依頼を数件受けたため、このホテルを拠点に数日間活動しようと思っている。なかなか良いホテルだ。私より僅かに早く着いたらしい女性が数メートル前を歩いている。女性のカバンの持ち方が少し不自然だ。なぜあんなに隠すかのように持っているのだろう。女性から少し遅れてホテルに入る。フロントではその女性が手続きをしているところだった。女性が持っているカバンは旅行用というよりはビジネスカバンに近い。そのカバンの外ポケットから覗く社員証を見つけた。見たことのあるロゴ、恐らく女性は銀行員だ。
16:40
女性がハンカチを落としたので拾って渡した。女性の職業に言及してみると驚いたような反応を見せたので、銀行員で間違いない。それにしてもやけに周りを気にするような不安そうな態度は何だろうか。
16:45
チェックイン手続きを待ちながらホテル内を見渡してみた。フロントに向かって左側がレストラン&バー、右側がラウンジ。ラウンジで本を開いている男性がいた。あくまで開いている、だ。読んでいるようには見えない。本はただ持っているだけ。ラウンジに座っている目的は他にありそうな感じだ。
それはそうとフロント係が変な視線を私に向けてくる。一体なんだ?
18:30
数日滞在するだけのホテルであっても、どこに何があってどんな間取りなのかを知っておかないと気が済まない。これも職業病かもしれない。ホテル内を散策して見取り図を描いておこう。私はいつも使っている手帳とペンを手にして部屋を出た。5分ほど2階を散策し、続いて5分ほど1階も散策した。
19:10
レストランへ入ると、先程ラウンジで本をもっていた男性が食事を始めるところだった。私に気付いて会釈をしてきたので、接触してみる。
「本がお好きなんですか?」
話し始めは何でも良いが、動揺を誘えると会話の主導権を握りやすい。
「えぇ、まぁ」
動揺1
「そうですか、少し意外な感じがしたもので。身体を動かす方が得意なんじゃありませんか?」
「えーと?」
動揺2
「そうですね、例えば、サーカス団員とか?」
他にも候補があるが適当に言ってみる
「すごいですね。そういうあなたは?」
当たりだったか
「探偵です」
「探偵さんでしたか。それなら僕の職業が言い当てられたのも納得だ」
平静を装っているが、動揺3
「職業病みたいなものです、気を悪くされないでくださいね」
「いえ大丈夫ですよ。ではまた」
話を切られた。何か私に探られたくないことがあるのだろうか。
20:05
サーカス団員をやっているらしい男性の後を追ってレストランを出る。どうやら私は嫌われてしまったらしい。その男性は私に気づくと早足で階段を上って行った。その様子を後ろから見ているとどことなく女性らしさも感じる気がした。サーカスを真面目に見たことがないから分からないが、女性らしい身のこなしも必要な職業なのだろう。
21:10
そろそろレストランやバーの人は掃けただろうか。他人の情報を得るにはバーテンダーに聞くのが一番だ。私は部屋を出てバーに向かうことにした。廊下を曲がったところで二人の人物が見えた。ベア・アーランに男性が肩を貸している。顔は見えなかったが、後ろ姿から推測するに先程のサーカス団員だろう。ベア・アーランはどうしたのだろうか。歩けなくなるほど外で酔っ払うような人物ではないはずだ。あとでバーテンダーに飲んだ酒を聞いてみよう。
バーテンダーの話
ベア・アーラン:軽い酒を二杯
マッグ・エニー:強めの酒を一杯。不安と緊張をお酒でほぐしたいからと言っていた
ジョーカー・馬場:軽い酒を一杯。噴水の方を気にしていた
21:25
フロント係がフロントを離れて2階へ。少し遅れて後を追ったが見失った。どこへ行った?
21:30
部屋に戻った。マッグ・エニーが裏庭からホテル内に入るのを自室の窓から見た。隣からはシャワーの音が聞こえていた。
0:05
ホテルの間取りのメモに2階窓の位置を書き忘れていた。別に明日でも構わないが、一度気になるとなかなか頭から離れなくなる性分だ。さっと確認しに行こう。客室廊下に窓はない。ロビーに窓は……おや? フロント係の女性が窓の前で固まっている。私が声をかける前に、その女性は何かから逃げるように1階へ降りて行った。追いかけようかと思ったがやめた。もう遅い時間だ、用事もないのにフロントへ降りては迷惑かもしれない。部屋に戻った。
0:20
隣の部屋からテレビの音が漏れ聞こえていたが、そう気にならないので、そのまま就寝した。
7:55
身支度を終えたが朝食まではまだ時間がある。レストランエリアでコーヒーでももらおうか。
8:00
階段を降りようとしたところ、電話のような音が聞こえてきた。数コール鳴り続けている。どこからだろうか。引き返して客室廊下の方へ向かう。どうやら奥の部屋で鳴っているようだ。ここは確か、ベア・アーランの部屋。ノックをしたが応答がない。電話の音が止まる。杞憂だったか。
8:05
フロント係の女性がやってきた。ベア・アーランの部屋に用があると見える。そうなると、先ほどの電話はフロントからのモーニングコール、応答がないから部屋まで様子を見に来たことになる。シャワーの音はしない。モーニングコールの音はかなり大きかった。部屋の中で何かが起きていると考えるのが妥当だろう。
「マスターキーはお持ちですか?」
こちらへ近づいてきたフロント係に声をかける。
「は、はい……」
「私が先に部屋に入ることをお許しいただけますか?女性が見るべきではないものが中にあるかもしれませんので。私の予想が外れていればよいのですが……」
そう言ってマスターキーをお借りする。何事もなければそれでいい。鍵を開けて中に入る。やけに寒い部屋だ。エアコンがききすぎているような気がする。二歩進むとベッドの側の床に血痕があるのが見えた。ベッドへ近づく。ベア・アーランの胸に刺さったナイフ。首を絞められた跡。呼吸と脈はない。
「警察に連絡をします」
「えっと、いったい……」
「ベア・アーランさんが亡くなっていました。申し遅れましたが、私は探偵です。
宿泊客をどこか一か所に集めていただけますか。
それから警察が来るまでこの部屋には誰も入れないように――」
8:10
警察への連絡を済ませ、もう一度、ベア・アーランの部屋に入る。何か痕跡は残されていないだろうか。パイプタバコと紙を見つけた。
8:30
ベア・アーランの部屋の鍵を閉め、1階へ降りた。ラウンジに宿泊客が集まっていた。さて、状況整理といこう。